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日本版ケースライティングガイドブック
慶應義塾大学経営管理研究科 髙木晴夫 監修 
株式会社テレコンサービス  (2007年3月)   

1.サマリー
 本ガイドブックは、ケースメッソド教育に用いるケースを制作するためのノウハウ本であり、ケースの構成から制作のきっかけと必要な情報収集、そしてケースの成立要件と完成したケースの活用までについて述べている。
教育の題材としてディスカッション授業に使用されるケースには理論や解説ではなく、あくまで「事実」の記述が求められるが、その分量はA4版にして、本文と付属資料で合計4~5ページから20ページ程度が最も一般的とされる。それは授業時間が一般的に90~180分程度とされるからである。
 制作におけるきっかけとしては、①論点が先に決まっている場合 ②対象が先に決まっている場合 の2パターン存在する。しかし、①は議論させたい論点が存在する事例が何処にあるのかを探すことに困難を伴うことが多いことなどから、制作者の興味関心から対象を選択でき、また調査の中から議論にふさわしい代わりの論点を発見しやすい②がお勧めの制作アプローチとされる。
 ケースはそのベースに「事実」がある以上、情報収集が必須となっているが、今日においては様々な媒体で多くの情報収集が可能となっている。しかし、注意すべきことは書籍や新聞などから収集したものには筆者の分析・考察そして意見が含まれているという点であり、それには別の手段でその情報を検証する必要性がある。また、情報収集にあたっては機密性の保持に関わる対象者にはその趣旨を明らかにし、収集への同意を得ることも必要である。
 ケースはただ事実がそのまま記述されていれば良いというものではない。ケースとして成立するには、ディスカッションすべき主たるテーマを具備している、つまり、学習者がケースに触れた時自分に何をすることを求めているのかというディスカッションイシューを明確にできる内容であることが求められる。
 完成したケースは授業で使用されることにより始めてその価値が発生する。しかし、理屈の上で良いものであっても、それが必ずしも実践的かどうかはわからない。そのため、完成したケースを授業で使用する前に、教師や学生の協力のもと「ケースの試運転」ともいうべきフィードバックを実施することでより良いケースに仕上げることが可能となる。

2.コメント
 人に考える材料を提供する機会はそう多いことではない。ゆえに事実の列挙ではなく、「自分ならば一体どうするだろうか」と考えさせられる教材を期末課題として制作してみたい。そのためには、1つのケース制作にどの位の時間が求められるのかといった記述が本ガイドブックにあれば、と感じた。

本稿では、ケースメソッド教材を書くための方法が解説されている。
ケースメソッドでは、「個々の場合における、それぞれの事実」を教材に仕立てたものをケースといい、ケースに対するディスカッションの形式で進める授業をケースメソッドと呼ぶ。「ケーススタディの方法」(Yin1996)で詳しく解説されているようなケーススタディとはその目的が教育であるという点で大きく異なる。
ケースの標準的な構成は、以下の通り。
・テーマ的なリード文
・そこに至る時系列項目と詳述すべき主要項目
・主人公の意思決定課題
・補足資料
だが、実際に書き進めるにあたっては、(1)焦点を当てたい意思決定の場面(2)そこに至る時系列の経緯(3)関連する情報(4)全体を予感させる数行のリード文 という順番で考えるとよい。
ケースの内容で大切なのは、ディスカッションイシューが明確であることである。ディスカッションイシューには様々なタイプがあるが、いずれにせよ市場においての「他社と は異なる活動を伴った」と「独自性のある価値ポジションを作り出すこと」を目標に議論を進めていくため、「競合他社」と「市場」についての情報すなわち3C(Customer、Competitor、Company)が不可欠となる。その他に、3Cの変化の特徴を示す環境についての情報、意思決定者の属性情報があるとよい。
以上がケース記述のために必要な最低限の要素であり、上達のためにはライティングのみならずディスカッションの経験を積むことが重要だ。
コメント:ケース教材作成にあたっては、ディスカッションの場や手順、そのいろいろなパターンがどれだけ明確にイメージできるかがその質を左右するということがわかって非常に参考になった。

【教材】
高木晴夫監修, 『日本版ケースライティングガイドブック』, テレコンサービス, 2007

【要約】
 本書は、研究手法としての「ケーススタディ」ではなく、教育方法としての「ケースメソッド」に注目している。その上で、教育目的のケースの作成方法について、詳細な指南をしている。

 標準的なケースの構成は以下の通りである。
  Ⅰ. テーマ的なリード文
  Ⅱ. そこに至る時系列項目と記述すべき主要項目
  Ⅲ. 主人公の意思決定課題
  Ⅳ. 補足資料

ケースは、学習者がその記述内容を噛み砕いた上で、自分自身がケースの意思決定者の立場にあった場合にどのように状況を判断し、意思決定を行うかという一連のプロセスをリアリティ高く実践するための教材である。そのため、①ディスカッションイシューを具備していること、②意思決定を行う人物が登場していること、が求められる。また、必要な情報が学習者に伝わりやすい体裁で盛り込まれていることも重要である。


【コメント】
本書には、ケースメソッドの位置づけとケース作成について、わかりやすく記されていた。思考実験としてのケースの活用は、確かに有効であるように思える。ただ、ケース作成者側からみると、よいケースを作成するには、単なる事実の列挙・提示ではなく、様々な用件をクリアしなければならない。これらをクリアするためには、実際に自分で幾度もチャレンジするしかないように感じた。

●「ケース」とはなにか
・「ケース」に関してはさまざまな定義があり,多彩な使われ方をする.ただし,「ケース・メソッド」で使用されるケースは,教育目的であるということを踏まえ,「必ずしも実際にあった出来事のみを対象とする限定的なものではない」という特徴がある.
・また,学習の場で用いられるもののために,「事実」の記述がその中心をしめる.理論や解説はまず書かれない.様子がありのままに述べられる.
・さらに,現在では「映像」などの教材も登場している.要は,「事実」を共有できればいいということである.

●「ケース」を用いて目指すこと
・現実に起こった「事例」を用いて,意思決定の問題を考えさせることにより,理論やセオリーを現実世界で,どのように役立てるか,もしくは応用させるかを学ぶこと.
・ここで実際に考えてみるという作業が非常に重要となる.
・また事前学習が求められる.事前学習(グループ討議や個人の予習)などが,クラス討議をよりよいものへとする.

コメント
ケース・メソッドはいわば,「思考実験」のようなものだと感じた.ケース・メソッドを繰り返すことは非常に有益であると感じた.もっとそのような授業があればいいなと思う.ひとつ疑問として,ビジネス以外の場面では,それほど用いられていないのはなぜだろうか.「問題設定-問題解決」というcycleのなかでは,有効な思考訓練な気もするのだが・・・

【課題図書】:竹田陽子、『プロダクト・リアライゼーション戦略-3次元情報技術が製品開発組織に与える影響』、白桃書房、2000年.
【要約】:ものづくりのマルチメディア化.従来の職域の変化.メディアツールとしての3D技術.
(1)旧世代3次元CAD⇒新世代3次元CAD(立体,フィーチャー機能):2次元図面が不要になり,3次元物体から直接インプット,アウトプットが可能に.777,ネオンへの応用から一般化.ラピッドプロトタイピング(実物試作).コミュニケーション促進.メディア機能.
(2)コミュニケーションのフロント・ローディング:機能部門間,企業間対話の前倒し,促進現象.⇒プロセス改革(製品開発,問題解決,多義性の処理,情報の粘着性).製品開発期間短縮用問題解決サイクルの配置の分類.シーケンシャルモデル.3つのオーバーラッピングモデル.
(3)導入戦略(ある特定の特性を選択的に引き出す利用法):(2)を達成する為には3次元情報技術のメディア機能を引き出す導入戦略が必要.メディア選択
(4)(5)(6)分析フレームワーク:検証したい仮説とケース研究(デザイン部門,設計部門間と設計部門,金型部門間のコミュニケーションについて)
□コミュニケーションのフロントローディング(仮説1a):情報技術のメディア機能が部門間の相互調整に活用されているプロジェクトでは,従来の図面ベースのプロジェクトに比べて,多くの部門の視点から問題が検討されている時期が前倒しされ,その結果,プロジェクト早期における部門間の相互調整量が増え,プロジェクト後期での相互調整の量が減る. ⇒設計・金型間で支持された. デザイン・設計間では工程の一体化が進んだ.
□導入戦略による違い(仮説1b):情報技術のメディア機能が部門間の相互調整に使われていない場合には,プロジェクトの進捗度に対する,部門間で問題を検討するタイミングは変わらず,仮説1a)の関係は見られない.⇒支持された.
□パフォーマンスの向上(仮説2):情報技術のメディア機能を活用したプロジェクトでは,従来の図面ベースのプロジェクトに比べて,開発パフォーマンスに関して,次の(1)~(3)のいずれか,あるいはその組み合わせの効果が見られる.①部門間の相互調整の総量が減少し,開発工数の減少にプラスの効果がもたらされる.②開発期間が短縮される.③アウトプットに多くの部門の視点が反映され,製品品質にプラスの効果がもたらされる.
⇒量産出後の部門間の相互調整の減少を通じて,主に開発期間短縮のかたちで達成された.
(7)組織特性要因:既存の機能部門間の分業体制との不整合.3次元情報技術は,機能の内部統合を支援する道具にも,外部資源の活用を支援する道具にもなりうる.
(8)分業の変化:設計者,金型,デザイナーの役割変化.マルチスキル化.縮小要因と拡大要因.
(9)日本の製造業へのインプリケーション:強み活用の為,最初に,製品開発プロセスで生じるコミュニケーションの土壌として,3次元情報技術のメディア機能活用を検討する.プロダクトリアライゼーション過程で,絶えず進化する,生きた情報の流れをいかに作り出すかが重要.技術と組織が相互作用を起こしながら進化するダイナミックなモデル構築の一助となる.
【コメント】:ケーススタディの実態が,ケース教材との違いなど,よく理解できた.結論と実際のデータを見ると,別印象もあり,データの提示と結論の提示双方の必要性を感じた.

第1章 ケースと
1. ケースとは何か
- ケーススタディの方法: ある問題の具体例を詳しく分析して、
一般的な真実を導き出す研究方法, 社会科学リサーチを実施するのに方法中の一つ
- 教育を目的とする場合、ケーススタディは現実の事象を完全または正確に描写する必要
はない。むしろその目的は学生間の議論や論争のための枠組みを設けることにある。
- ケースメソッド実践原理: 育ケースとは、実地のエピソードの描写、現実の抜粋、
人生の一断片、研究材料として立案されたストーリー、演習、パズル、または問題である。
このようなすべてのケースには共通の目的がある。それは教えることである。

2 .ケースメソッドとは
- 現実に起こった『事例』を使って、
- 意思決定の問題を生徒に考えさせることにより、
- 理論やセオリーを現実世界でどのように役立てたり応用させるかを学ばせることであり、
- レクチャーで学ばせるよりも、「理解させる」「記憶させる」ことにも優れている。

3. なぜビジネス教育にケースメソッドを適用するのか
- ビジネス教育とケースメソッド : ビジネスの実践を重視する教育に対して PDCAの
サイクルと最適の意思決定を どうするかということになる。
- MOT 教育とケースメソッド : 技術経営分野の実践能力を体得して, 意思決定能力を
向上 するためには技術経営に関する ケースに付いてディスカッションすると言う学習方法
(ケースメソッド)が有效になると言える。

第2章 ケースを書くまで1. 標準的なケースの構成
普通, どんな時点への状況と情報を補うための部属資料の 2 部構成になっていて,
本文は導入部分, 責問場, 意思決定問題の 3 部構成が一般的だ。

2. 良いケースの条件
- 目的にあった教育主題を持っている
- 話の展開が優れている(読みやすく興味をひく)
- 受講者に問題提起していて、受講者はそれが容易に認識できる
- 受講者自身が分析・考察することができる内容である
- 受講者が意思決定者になりきることができる内容である
- 議論をかもしだす内容である

3. ケース制作のきっかけ
ケースを製作するきっかけは使いたいテーマ・論点がまずあって, そこに会う対象物を
捜して書く場合と使いたい対象物がまずあって, そこにテーマ・論点を捜し出して行く
場合がある。

第3章 必要な情報収
1. 公開情報による調査
作業を效率的に実施するため, まず, 一般的に公開されている情報による情報
収集を実施する。 最近には多様な媒体で膨大な量の情報収集ができる。

2. 個別調査の準備
個別の調査は一般公開情報以外に現場で起きていることをよりリアルに説明する
のが可能だ。

3. 調査の実施
研究方法としてのインタビューは質問の仕方の標準度に応じて構造化インタビュー、
半構造化インタビュー、非構造化インタビューに大別できる。

第4章 ケースの構造、内容につい
1. ケースの構成と書く順序について
ケースライティングを效率的に実施するため, 標準的な構成で使って進行されることを
お勧めする。

2. ケースに記述する内容について
戦略構築、マーケティングプランの採択、投資判断、人事制度の変更、
サプライチェインの構築、新たな技術の市場化政策など、ディスカッションイシューには
さまざまなタイプがある。
.
第5章 ケースの活用
1. ケースの試運転
完成したケースは事例研究法を使う授業で使われることで実際のその価値が発生する。
ケースが学習者に良いディスカッションを提供するのが必要だ。

2. ティーチングノート
- ケース制作の動機、目的
- ケースの概略
- ディスカッションイシュー
- 議論の設計
- ケースの後日談

3. 制作したケースを教材として活用するために
個別の調査を実施して製作したケースの場合, 最終的に情報提供者から教材使用許可
と登録が必要です。

【コメント】
適切なケーススタディを教材として選定して学習者に良いディスカッションと現場適用に
役に立つことができるようにするし, 事例研究法の原理を適用してもっと多い分野に応用
及び情報共有になることができるようにする。
特に意思決定をするのに正確な情報と事例を提供して正しい意思決定ができるようにする。

【ケースライティング:要約】
ケース教材を書く人に向けた入門書である。

1.ケースメソッドとは
2.ケースの書き方の概要
3.ケースに必要な情報収集の方法
4.ケースの具体的な書き方
5.ケース教材活用のために

の5章で構成されており、

「1.ケースメソッドとは」では、
まず、はじめに「ケース」および「ケースメソッド」という言葉について、「ケースメソッドにおけるケースとは、教育を目的としたものである」と定義し、ケースメソッドを「訓練主題の含まれるケース教材を用いて、ディスカッション授業を行う体系的な教育行動」であると定義している。
訓練主題とは、意思決定力をつけるための意思決定の問題のことである。
つぎに、ビジネス教育におけるケースメソッドの有効性を述べている。受動的に学んだ、(レクチャーメソッドの)知識だけでは、経営をうまく実践することはできない。「全体を俯瞰的に見て、個々の事象をどのようにつなぎあわせるかを考え、意思決定をする力」および「理論を何に対して適用するかを考える力」が経営には必要であり、それにはケースメソッドが適していることを述べている。
このように、第一章ではケースおよびケースメソッドについて定義し、ケースメソッドが意思決定力をつけるために有効な教育方法だということを述べている。

「2.ケースの書き方の概要」では、
まず、よいケースの条件として、「教育主題がある」「議論をかもし出す内容である」「受講者に問題提起している」「受講者が意思決定者になりきることができる」「受講者が分析、考察できる内容である(データがそろっている)」ことを挙げている。
そのうえで、教育を目的とするケースを書くならば、必ずしも事実を完全に描写する必要はなく、むしろ教育主題に沿って省略したり、議論を誘発するような構成にすることが望ましいと述べている。
ケース制作には、教育主題が先に決まっていて、あとから事例を探す場合と、事例から教育主題を作る場合があるが、情報の入手のしやすさなどの観点から、初心者がケースを書く場合には後者の方法がよいと述べている。

「3.ケースに必要な情報収集の方法」では、
まず、情報収集にあたって気をつけなければならない点として、「分析、考察がなされた情報が入ってはならない」ことを挙げている。これは、受講者が分析、考察を行えなくなり、教育効果を妨げるためである。
情報収集には、公開情報による調査と、個別調査がある。個別調査はその手間や、情報公開許可の取得などの点において負担になるが、ケース教材に「現場で起こったこと」を記述するために必要なステップである。個別調査においては、情報の使用許可をきちんと取ること、情報提供者との良好な関係を築くことが大切であると述べている。

「4.ケースの具体的な書き方」では
ケースの一般的な構成(テーマ的なリード文、そこに至る時系列項目と詳述すべき主要項目、主人公の意思決定課題、補足資料)を示し、時系列項目および主要項目には「分析や考察を入れないこと」「当事者だけでなく、周りの環境(ビジネススクールで使われるケース教材の場合は、「自社、競合、顧客)の情報も明示すること」を注意点としてあげている。
そして、書き方の順序として「意思決定課題」「時系列項目」「主要項目」「データ」「リード文」の順に書くことが望ましいと述べている。
また、授業で使用するための適量が、15ページ前後であることを挙げている。

「5.ケース教材活用のために」では、
ケース教材はテスト(テスト受講者による試運転)をするべきであること、実際の授業者と協力して、ケース教材の意図および授業進行予定を書いたティーチングノートを作ることが必要であることを述べている。

全体として、
「ケースメソッドは意思決定力をつけるために有効な教育方法であり、ケースメソッドに使うケース教材は必ず「ディスカッションを誘発」し、「意思決定課題が明確」であり、「意思決定のためのデータがそろっている」べきである」ことを述べている。

【コメント】
教育を目的としたケースの作成において、「何を教えたいのか」を最初に決めない、というのが、ケースライティングに特徴的だな、という感想を持ちました。
一般的には、教材を作る際には教育目的や学習目標がはじめにあり、「その目標を達成させられる教材とは?」を考えるものだと思いますが、ケースライティングではティーチングノート(教育目的の明確化)が最後にきていました。
教育に焦点をしぼりすぎることによって、ケースに「意図」が色濃く入ってしまうことへの防止策なのでしょうか?(ケースの書き方の順序が、まず「意思決定課題」となっていることが、教育目的の明確化にあたるのでしょうか。)

【ケースメソッド】
ケースメソッドとは、現実に起こった事例を使って、意思決定の問題を生徒に考えさせることによって、理論やセオリーを現実世界でどのように役立て、応用させるかを学ぶ教育方法である。レクチャー形式よりも理解し、記憶させることに優れている。
【ケースの構成】
リード文(イントロ)
意思決定に至る時系列項目
意思決定の問題
付属資料
という4部からなり、分量は5~20枚程度が適度。
【良いケース作成のために】
ディスカッション中心の教育方法であるために、高い教育効果を見込めるケースである必要がある。その為に、目的にあった教育主題を持っている、話の展開が優れている、受講者に問題提起していて、受講者はそれが容易に理解できる、受講者自身が分析・考察することができる、といったポイントに留意して作成する。
議論すべきポイントと、それを有する組織が明確である場合、ケース作成は容易である。
【ケースの有効活用のために】
作成したケースが授業の中で有効に使われるために、ケース作成者は、使用前に試運転を行ったり、ティーチングノート(作成者が、ケース作成の趣旨などを記したノート)をつけたりすることにより、使用前の論点整理や、使用後のリフレクションを効果的に行える。
【ケース教材~富士フィルム~】
従来のフィルムから、光ファイバーを用いデジタル化するか否かの判断を問う事例。不確実性や技術革新など変換御激しい技術中心の企業経営において、現在の環境をどう捉え、将来を予測し、自社の経営戦略に繁栄させるかを考えるための素材。
【ケース論文~フラット組織の理論と実際~】
意思決定方法がトップダウンで無いためにトップ主導型の改革が進みにくいとされる日本の大企業において、組織のフラット化を行う際にいかなるプロセスをとるのが効果的であるかを明らかにすることを目的とし、まさに改革を行っている数々の企業を取り上げケース論文を作成した例。
【コメント】
特に、富士フィルムのケース教材が興味深かった。背景となる、会社の経営状況から光ファイバーについてなどの技術的知識に至るまで、実際の経営判断の際の指標となるような多くの具体的情報がちりばめられており、実務さながらの議論が見込めると感じた。
また、一通りディスカッションした後、そのテーマについてより深く理解するためにもティーチングノートの有効活用が必須であり、自分も今期末の課題提出の際には参考にしたい。

◆まとめとコメント
ケースメソッド教育は「現実に起こった『事例』を使って」、「意思決定の問題を生徒に考えさせることにより」、「理路やセオリーを現実世界でどのように役立てたり応用させるかを学ばせることであり」、「レクチャーで学ばせるよりも、「理解させる」「記憶させる」ことにも優れている」とされる。ケーススタディの本質と意義はこれまで勉強してきたとおりだが、反対の「作る」立場になって考えてみるとこの条件を満たすケースメソッドを作成(ライティング)するのはなかなか難しそうだと思った。ケースの成立要件についても様々なことが書かれていたが、単なる事実の列挙を並べただけではもちろん前述の教育効果を果たすことは難しい。
この授業の最終的な課題は「ケースを一本作成する」である。つまるところそれは、ひとつの事例に真剣に向き合い何がディスカッションイシューなのかを判別する能力と、学習者を感情移入させるような文章構成力が求められるということではないだろうか。もちろんそれ以外にも当該ケースの選定や資料作成など様々な作業もあるだろうが、自分にこの2つの能力があるかといわれると正直不安すら覚える。
ケース作成という大きな作業を通して研究活動におけるプロセス―RQの設定など―を磨く力を養っていきたい。

『日本ケースライティングガイドブック』 慶応義塾大学経営管理研究科,高木晴夫監修,2007
【要約】
 このガイドブックでは、第1章に「ケース」とは何か、ケース教育はなぜ今求められているのか、ということがまとめられ、第2章以降にケースを実際作成し、活用する段階の様々な事柄についてがまとめられている。
<ケースとはなにか>
 教育目的で制作される「ケース」とは、個々の場合におけるそれぞれの事実を教育の題材に仕立て上げたものの総称である。これを用いたディスカッション形式の「ケースメソッド授業」の具体的定義としては、「参加者個々人が訓練主題の埋め込まれたケース教材を用い、ディスカッションを通して、ディスカッションリーダーが学びのゴールへと誘導し、自分自身と参加者とディスカッションリーダーの協働的行為で到達可能にする授業方法」ということが示され、①事前授業、②グループ討議、③クラス討議、④振り返り、というステップを踏むと述べられている。
 ケースメソッドがビジネス教育やMOT(技術経営)教育で有効な学習手段として活用される理由は、それぞれの教育に求められる要素からくる。ビジネス教育においてはPDCA(Plan→Do→Check→Act)サイクルを適切に回すこと、すなわちその局面における最適な意思決定をどのように行うかということであり、MOT教育においては技術に関する理論や知識を実践に結び付けていくために、「何を」「どのように」行うべきかという実践能力を体得し、意思決定能力を向上させること、ということである。これらの総合的意思決定力を培うのに対し、学習者がケースに記述された状況下で疑似的にその状況における最良の意思決定を行う訓練であるケースメソッドは非常に適した教育方法であるとまとめられている。

 標準的なケースの構成は、ある時点での状況と課題が描かれる本文と、情報を捕捉するための付属資料との2部構成となっている。A4版で本文が3~4ページから15ページ程度、付属資料が1ページから5ページ程度の合計4~5ページから20ページ程度となるのが一般的である。本文はテーマ的なリード文(導入部分)から始まり、意思決定をせまられるまでに至る時系列項目と詳述すべき主要項目の記述、そして主人公の意思決定課題の提示、という3部構成になっている。学習者が疑似体験化しやすくするため、ケースの主人公は個人である場合が多く、その内容は、原則はすべて事実に基づくが、教育効果を高めるといった目的のために一部の情報が隠されていたり偽装される場合もある。

 ケースの成立要件としては、①ディスカッションイシューを具備していること②意思決定を行う人物が登場していること、が欠かせない。①のディスカッションイシューに関してはどのようなものを取り扱う場合でも、PEST(Politics, Economy, Society, Technology)→3C(Customer, Competitor, Company)に関する情報は最低限抑えておく必要がある。また、意思決定者の属性についても明らかにしておく、単なる事実の列挙にならないよう心がける、などして学習者が意思決定を行う上での臨場感にかけるということがおこらないようにすることも重要である。
良いケースの条件としては
・目的にあった教育主題を持っている
・話の展開が優れている(読みやすく興味をひく)
・受講者に問題提起していて、受講者はそれが容易に認識できる
・受講者自身が分析・考察することができる内容である
・議論をかもしだす内容である
といったことが挙げられる。そのためには、一般化できる経営判断の問題を含んでいるか、意思決定者の観点から書かれているか、中立的かつ客観的な記述が、分析・意思決定に必要な最低限の情報が含まれているか、受講者の学習時間・負荷を考慮してあるか、記述対象の会社・個人の承諾が得られているか、製作者の分析や考察・解決策が入っていないか、などのポイントをチェックすることが必要である。
 ケース制作のきっかけとしては、書きたいテーマ・論点が先にあり、それに合う対象物を探して書く場合と、書きたい対象物が先にある場合の2パターンがある。議論させたい論点が特定されており、論点が対象とする組織に存在することがわかっている場合に最も作成しやすく、両方ともわからない場合が最も作成が難しい。ケース作成において情報収集は必須の作業であるため、公開情報を利用したり、個別調査を行ったりすることが求められる。作成したケースについては、ケースライター自身のチェックはもちろんのこと、複数人によるチェックや試運転を経ることでより良いものになっていく。
 また、完成したケースに関しては、多くのケースメソッド実践の場で使用されることが望ましいため、ケースライターの意図を他のケース利用者と共有するためのティーチングノートを作成すること、さらには、ビジネススクールや日本ケースセンターなどに登録を行うことも検討すべきである。

【コメント】
 「瑞穂製鉄株式会社―フラット組織の導入―」に関しては、今回のガイドブックで示されている手順に沿って記述されている、まさにケース教材であると感じた。「フラット組織化の理論と実践―日本の大企業の場合―」については、ケースを基にした論文の書き方に関してとても参考になったのと同時に、1つ1つの事例を丁寧に取り上げているという印象を受けた。
教育目的のケースを書く、といっても自分にはビジネスに関する知識もあまりなく、どうすればケースを書くことができるのか不安に思っていた。しかし、このガイドブックや瑞穂製鉄についてのケースを読むことで、どのような順序で、どういったことに留意しながらケースを作成していけばよいのかイメージをつかむことができた。特に情報収集の仕方や、成立要件に関する部分、チェック方法などについては具体的に示されていたのでとても参考になった。

【要約】
ビジネス教育にケースメソッドを利用する利点とは、経営学の各理論を、擬似的に実際の現場の課題に即して最良の意思決定を行なう訓練を行なうことで、中長期的な全社視点に立った考察・意思決定を可能とする能力を高めることにある。
ケース作成については、多くの指南が掲載されている。
ケース作成にはまず、ケース決定と調査対象への連絡がある。調査対象とケースにおける論点を特定しておくことがケースライター初心者には大切である。ケースを実際に書き進める際には、教材としての役割を持たせるために、中立的かつ客観的な視点から分析のために必要な情報が盛り込まれている必要がある。制作者の分析や考察は不要である。

【コメント】
 ケースを基にした修士論文について
 丁寧な調査の上に書かれた論文であり、新しい視点を得ることのできる論文と考える。論文の構成も、ケースで論文を書く場合の議論の流れを理解しやすい。一方で、調査手法の視点からこの論文を見た場合、調査手法の説明・ケース選択の説明が不足していると感じる。初めの事例紹介の事例選択理由や、N社の選択理由をより明確に提示するべきである。考察の議論するための論文の枠組み自体に信頼を十分に置けないので、考察の質が良いと思うが、改善の余地のある論文ではないかと考える。

ケースライティングガイドブック

本書ではまず研究のための「ケーススタディ」と教育のための「ケースメソッド教育」の違いを指摘し、ケースメソッド教育のための教材開発についてかなり詳細に指南している。そこでケースメソッド教育に相応しいケース教材とは、ディスカッションイシューを含み、受講者がバーチャルな意思決定を行えるような状況と状況を備えていることであるとされている。その後、ケースのチェックと運用・FAQに関して記述されている。
その観点から提示された二つのケース「瑞穂製鉄」と「フラット組織化の〜」を比べると、明らかに瑞穂製鉄はケースメソッド教育のためのものであり、フラット〜のほうは研究用のケーススタディが含まれている論文あることがわかる。

コメント
前回の授業と併せて、ケース教材とケーススタディの峻別が明確になった。クリステンセンの言うところの経営者に必要な「経験の学校」を疑似体験させるものが、ケース教育にあたるのだろう。

ケースライティングガイドブック(西田)
【要約】

ケースメソッド教育は、経営や
マネジメントの実践的な問題解決・
処理能力を養うために、教材として
加工された事例を用いた教育方法である。
この手法は実践力養成の手段として、
MBAコースなどで高い成果を
発揮している。

なお、
様々な理由により
一般化しにくい事例を取り扱う研究目的の
「ケーススタディ」とは一線を画するものである。

ケースメソッド教育における教材の特色は、
・全体を予感させる数行のリード文
・意思決定に至る時系列項目並びに
詳述すべき主要項目のミックス
・意思決定の問題
・付属資料
から成り立っている。その教育の特色としては、
・事前学習
・グループ討議
・クラス討議
・振り返り
によって構成されており、学習効果は
相互作用的であり、また同時に不確定である。

ケース教材の作成においては、
・まず焦点を当てたい意思決定の場面を書く。
・そこに至る時系列の経緯を書く。
・関連する情報を項目立てて足していく
・最後に「全体を予感させる数行のリード文」を書く
という学習とは逆算的に作成すると作成が容易である。

また,ケース教材の作成にあたっては、相手先の
企業にそのメリット・デメリットについて説明し承諾を得る必要がある。


【コメント】
この「ケースライティングガイドブック」も
また極めて分かりやすい記述である。
前回のケース教育の話と併せて考えると、
ケースを用いて習得すべき(目指すべき)ノウハウが
見えてくるだろう。
また、同時にケース教材の開発が、
極めて実践的であり、同時に研究のきっかけでもあるという前回の
授業の話の意味が例を参照しつつ理解することが出来る。

要約 稲木健人

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1、日本版ケースライティングガイドブックではケース教育の意義から始まる。

ケースメソッドは講義形式とは異なり、学生参画型の授業を試み、その効果は生徒各々が考え、理解し、記憶することを容易にすることである。ディスカッションを通じ話し合い、そして振り返ることの繰り返しがビジネスにおける実践につながる効果的教育方法である。

そしてそのケースの作り方に話は移り、要点としてはP16にある。その中で大切なのはテーマの一般性であり、困難なのは記述されている会社・個人から公開の承諾が得られているのか?という点であるように思われた。協力が得られないと魅力的なケースも土に埋もれてしまうように思われた。それ以降は作法に近い内容であった。

2、ケーススタディ論文として瑞穂製鉄と日米企業の社内フラット化の効果と意義について

先日の修士課程今秋終了予定者の発表にもあったが、上手なケーススタディの下手なケーススタディについて重要な違いはその題材である。確かに各国の政治的問題のように日本と韓国の政治的相違のようにあいまいのテーマ、しかしケース以外に比較しようがないような問題に対しては当てはまりがよい。しかし単に商店街の活性化の2つの商店に絞って比較するだけではあまりに一般性が低く、ケースには適さない。今回の日米企業の社内構造の比較のように他の企業の改革例を10社ほど提示すれば比較的一般性は維持されると考えられる。

3、コメント
定性的・定量的研究の双方に意義があることは賛成である。確かに定量的研究の一点張りの研究者は数的根拠しか頭がなく、偏りがあると思う。しかし一般性を維持するには確かに定量的研究は優れている。スタンスとしてはまずは定量的研究をし、場合に応じて定性的研究にシフトすべきと考える。最後に基本的であるが定性的研究をするならば多くの人に見てもらうこと、時間的余裕を持って取り組むことである。

【要約】
 ケースメソッド教育は、ハーバード大学ロースクールにその原型があり今の形になったのは1930年代ハーバードビジネススクールにおいてである。その形とは、訓練主題の含まれるケース教材を用い、ディスカッション形式の授業を行うものである。ディスカッションに臨むまでに、個人予習→グループ討議→クラスディスカッションという3つの学習段階がふまれる。具体的な定義として、「参加者個々人が訓練主題の埋め込まれたケース教材を用い、ディスカッションを通して、ディスカッションリーダーが学びのゴールへと誘導し、自分自身と参加者とディスカッションリーダーの協働的行為で到達可能にする授業方法」とハンドブック中では述べられている。
 ケースメソッド教育の最大の特徴は、教師(ディスカッションリーダー)の役割の重要性である。ディスカッションリーダーに求められているのは、参加者の自律性を引き出すことはもちろん、狙った教育目的を達成することを同時に行うことである。
 ケースメソッド教育が経営者を育成するビジネススクールで有効な教育方法として選択されているのは、ケースメソッド授業に参加することにより、横軸の知識に関する部分だけではなく、縦軸とする~力・~力といったような様々な能力をも身につけることができるからである。また、多様な人間が集まり、「勇気」「礼節」「寛容」を重視して協働的に活発なディスカッションを行うことによって、多様な人間を束ねることが求められる経営者として必要な経験を積むことができる、ということも理由として考えられる。

【コメント】
私は教員という立場でもあるので、ハンドブックで述べられている、あるいはビデオで実際見ることができたディスカッションリーダーの役割に関する部分が一番印象に残り、考えさせられる部分も多かった。教材を用意する段階から実際のディスカッションの場まで、一貫してその授業の狙いを念頭において準備・行動しなければならないし、かつ自分の発言で自分の持っていきたい方向にディスカッションを無理やりもっていってしまうことは避けなければならない。このような能力を身につけるのは、当初想像していたよりずっと、時間・経験など様々な面で非常に難しいことだということを感じた。

ケースメソッド教育

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政策メディア修士1年 正宗美生


ケースメソッド教育の定義は、ケース教材を用いて行う、ディスカッション授業方法である。訓練主題の含まれるケース教材を用いてディスカッションを行う体系的な教育行動を表している。また、具体的な定義は、「参加者個々人が訓練主題の埋め込まれたケース教材を使用し、ディスカッションを通じて、ディスカッションリーダーが学びのゴールへと誘導し、リーダーと参加者の協働的な行為で到達可能にする授業方法である。また、ケーススタディとは、似て非なるものである。ケーススタディとは、ある事例について研究考察した結果得られた研究成果物を表す際、もしくは事例研究という教育訓練活動のことを言う。ケースメソッドのように、ディスカッション重視と言うよりも、教材にケースを用いていると言うことが重視される。
ケースメソッドにおいては、ハーバードビジネススクールにおいて、討議に参加する際の価値観として「勇気」「礼節」「寛容」を重んじ、協働的な態度をとることが、伝統的に繰り返され、確認されている価値観である。
ケースメソッド教育の設計プロセスにおいては、5段階に分けられる。
1、 ケースメソッド教育の包括的な理解、2、コース開発、3、参加者募集4、教材提供
5、授業である。このような段階をもち、設計していくことで、学習目的を明確に設定することができる。
ケースメソッド教育は、さまざまな場面において、応用が可能である。企業内教育プログラムなど、ビジネススクールのような長期的のプログラムではなく、マーケティング、経営戦略、リーダーシップ、財務会計、企業倫理などの科目を集めた短期的なプログラムの実施などもある。また、ケースメソッド教育において発揮される個人の能力の評価や、人材育成、そして経営改善などにもケースメソッド教育が応用できる。
しかし、全てのケースメソッドが応用可能なわけではなく限界もある。ディスカッションの環境や、形式、参加者の確保、などの要因によりいつでも豊かなディスカッションが必ずできるとは限らない。


コメント
ケースメソッド教育を通じて、積極的な発言と思考の強化と同時に、次は実践に生かせるかどうかということが重要だと思う。

【課題図書】:高木晴夫,ケースメソッド教育(以下CME)ハンドブックおよびビデオ.
【要約】:高木氏の人間的問題を扱う科目特性の表れ.教師いじめ禁止(有識者の資質が左右).
■CME教育とは?:1930年代にハーバードで、1962年よりKBSで.
□ハーバードロースクールが起源.判例(ディベート型)から経営事例(協調型)へと発展.
□個人予習→グループ討議→ディスカッション授業.ケース教材,ライター,教師の集合体.
□CMは教え方,CSは研究方法及び事例研究という教育訓練活動.
□ケース教材はディスカッション誘発を基にした学習主題あり.解釈や主観は不要.
□横軸(専門知識)と縦軸(統合力,洞察力,戦略力)の2×2マトリックスのイメージ.右上を目指す.CMEは縦軸を伸ばす.情報のネットワーク化.(擬似的)修羅場が成長を加速.
□枠組みを学習者が用意(教科書では体系が組まれている).ディスカッションで思考訓練を行い,自分の限界を伸ばす. 勇気,礼節,寛容が必要.
□討議というシステムが知恵というアウトプットを生み出す.総合的コミュニケーション力
□コラボレーションの場,試行創造の場(協創と独創),人間的成長の場
□スーパーゼネラリストに必須な要素.情報の統合力,実行を前提とした意思決定力を生む教育.自己主張の強いスペシャリストをまとめる役を目指す.
□最低6人以上,100人以上など多くてもだめ.多い場合は会場に工夫が必要.
■CMEの設計プロセス.応用の可能性,一般的な疑問と答え(これは便利)
□CMEの包括的理解→コース開発→参加者募集→教材選択→授業※一連の手順が重要.
□企業内プログラム,人事評価,人材育成,経営改善への応用可.限界もある.
■ディスカッションリーダーシップ:習得(労力を使わず聞く,理解する,板書,コメントする)
□ディスカッションは,自由連想と目的を目指す二律背反が求められる.自律主体集団. リーダーは,可能な限り生産性を高め,自立性を引き出し,かつ意図を持って狙った教育目標達成も同時に求められる.理論学に対して実践学的要素が要求される. 模範解答を示さない.
□3段階のクラス討議成長:「事実把握と問題解決」→「知的付加価値の創出」→「叡智化」
□フレーミング(すべての基本.初心者でも時間をかければ出来る.参加者の理解.),ファシリテーティング(瞬間芸.各種設問,黒板,無駄話などで誘導.),トラッキング(創発.最も人為的,意図的,計画的)の3要素.設問をずらす.繰り返す.あえて間を取る.(ビデオでの様子)
□動物的な動き,エゴを取り払って本当にオープンになり,教師と学生で構成する教室という『有機体の中に身を置いて学んだ』という実感の有無.経験よりもむしろ感性が必要.
□○必要な適正レベル:ポジティブ,人間好き,対話好き,人の話を聞くのが好き,人との間合いを取るのが好き,自分も学ぶのが好き,人の能力を引き出すのが好き.
□×:柔軟でない(考えの押し付けなど),『自分自身も学ぼう』という態度に欠けている.
□授業の流れを,時間配分を含めある程度想定する程度がちょうど良い.作りすぎも×.
【コメント】:CMEの理論と実際(ビデオでより具体的に)を詳細に,テクニック含め理解可.ある怪しい相対性的理論を用いれば更なる発展,簡略化の可能性有.悪代官(的名の教員)が大変可能性有,興味有との事.今後理論構築と実証を行い,研究してみると良いとの事.

●ケース・メソッド授業の定義
参加者個々人が訓練主題の埋め込まれたケース教材を用い,ディスカッションを通して,ディスカッション・リーダーが学びのゴールへと誘導し,自分自身とディスカッション・リーダーの協働行為で到達可能にする授業方法をいう

●ケース・メソッド授業の特徴
教師の役割に,その最大の特徴がある.教師は,参加者の自律性を引き出し,その上で狙った教育目的を達成することを同時に行わなければならない.

ケース・メソッド授業は,「実践学問」として推奨されるものである.実践学問は,単に問題を理解し,分析するだけでは不十分であり,その問題を何らかの具体的な形で解決する行為の実行が必ず求められる.そのため,ケース・メソッド授業では,「修羅場」を仮想体験するために用いられる.意思決定の場面を幾度となく考えることによって,それを養成する.

●ケース・メソッド授業の価値・「コラボレーションの場」
ディスカッションを行うことで,ひとりでは到達することのない「地点」まで辿りつくことを可能とするものである.
・「試行創造の場」
異なる立場の人びとがコラボレーションすることで,「試行」の量が蓄積されていき,「協創」と「独創」がスパイラルを描く.
・人間的成長の場」
討議を通じて,人間的にも成長していく.

コメント
ケース・メソッド授業では,ディスカッションを重視し,たえず意思決定を迫られる,ということで通常のlecture形式の授業では,得られない経験ができるのだと思う.さまざまな分野におけるケース・メソッド授業を体験してみたいと思った.
また正解というよりは「process」に力点が置かれており,とても興味深いと思った.

第1部 ケースメソッド教育への招待状

1. ケースメソッド教育とは
英語で 「Casemethod of teaching」あるいは 「Casemethod of instruction」
と表現がある。 この表現から分かるようにケース
教材ではなくて, それを利用して実施する 「ディスカッション授業」と言う授業方法だ。
事例研究法授業の具体的な正義は 参加者ひとりひとりが訓練主題歌埋めたケース
教材を利用してディスカッションを通じて, ディスカッションリーダーが学問の目標を
誘導して, 自分の自身と参加者とディスカッションリーダーの協同的行為で到達可能にさせる。

2. ケースメソッド授業と経営能力の育成
大学で教える 2種類の学問は「理論学問」と「実践学問」だ。理論学習目的のための
相応しい教育方法が「事例研究法」だ。ビジネススクールで経営学を教えることで経営学は
経営実務家の養成を目的にする。

3. ケースメソッド授業における学習活動
事例研究法授業では指摘作業を進行しようと思って, これは, ケースに触発になって他人との
討議を通じて行われて学習活動だ。 指摘作業をいっそうもっと先に進行する場合, 一人で
解決することができる時もあるが, 今までの事故経験で解答が発見されない時もある。
特に 解決しなければならない問題が非常に大きいとか, 導出される解決策への期待が
大きい場合他人と協同作業が必要だ。

4. ケースメソッドで学ぶことの価値
一つめは、ディスカッションが「コラボレーションの場」になることである。
二つめは、討議を通して「試行創造の場」が形成されることである。
三つめは、一つめと二つめを合わせた成果物としての「人間的成長の場」である。

5. ケースメソッド教育の設計プロセス
事例研究法教育設計の 5段階の設計プロセスは 1) ケースメソッド教育の包括的な理解,
2) コース開発, 3) 参加者募集, 4) 教材選択, 5) 授業だ。

6. ケースメソッド教育の応用の可能性
事例研究法教育の応用はプラスアルファの機能を付け加えて, 人事管理上のツールとして
活用するのだ。1) ディスカッションの参加者が持つ能力はすべて「発話」として表出される
という側面である。2) 個人と集団の相手関係がいつも課題になる。


第2部 ディスカッション・リーダーシップ
1. ディスカッションリードという営みを理解する
ディスカッションをリードするということはディスカッションを通じて参加者の主体性を 維持及び
促進しながら 教師は目標どおり教育行為を果すことだ。 目標を実現するためには活発な
ディスカッションを展開した方が良い。

2. ディスカッションリーダーに必要なスキルの柱
フレーミング, ファシリテーティング, トラッキング

3. ディスカッション授業計画の下準備
事例研究法授業を教えることでフレイミングが一番重要だ。 フレイミングがまともにできて
クラスが自ら最終目標に行くことができる可能性が大きい。

4. ディスカッション授業を計画する
教育コンテンツの設定, 段階的な議論の構造作り, 設問の設定, 時間配分, ディスカッション
進行のイメージ作り, 議論の準備, 授業準備ノート, フレーミングからの乖離, フレーミング」
の結び

5. ディスカッション授業を動かす
ファシリテーティング・スキルのストック, 基本動作, 状況対応, ファシリテーティングと教育
価値観, ファシリテーティングの結び

6. ディスカッション授業で学ばせる
討議が雰囲気が良いこととそこで学ぶことを得ることでは違う。 ディスカッションリーダーで
教壇に立つためには その差を理解して, 参加者の学習のために具体的な努力をすることが
できるのだ。 トラッキングという討議の柔道技術も必要だ。

【コメント】
事例研究法においてさまざまな方法を使うことも良いが教材の内容どおりディスカッションの
方法が一番 Synergy效果を高めることができると思う。持続的な意見交換でもっと良い解決
方法を捜すことができて予想することができなかったプラスアルファ效果も期待することもできる
討議する状況で参加者達が暮して来た環境, 教育, マインドが全部違うからいろいろ面白い意見
あるいはこの前には思うことができなかった良いアイディアたちがたくさん出ることができると思う。

■要約
ケースメソッド教育を始めたい人向けの、ケースメソッド教育の入門書である。
・ケースメソッド教育とは
・ディスカッションリーダーになる際の注意点
の大きく2つの内容で構成されている。

前者は、ケースメソッド教育に興味を持っているが、ケースメソッド教育への疑問点がある人に向けて、
・ケースメソッド教育ではどのような学習効果が得られるのか
・ケースメソッド教育で伸ばせる能力と、伸ばせない能力はなにか
・ケースメソッド教育を始めるためには、どのような準備をすればよいか
・ケースメソッド教育の評価は、どのように行うのか
このような内容を、解説、ケースの提示、Q&Aの提示などの手法を用いて示している。

後者は、ケースメソッド教育を始めようとしている授業者(ディスカッションリーダー)に向けて、
・ケースメソッド教育における授業者の役割(ディスカッションリーダーの役割)
・ディスカッションリーダーが行う仕事の流れ(準備・授業進行計画・授業当日の仕事)
・よりよいディスカッションリーダーになるために
といった内容を解説している。

この文書の中では、
・ケース教材の設計方法
・授業実施後の授業評価の方法
・授業評価にもとづく授業改善の方法
については、あまり言及されていない。
(失敗事例としてケースが示されているにとどまる)
これは、この文書が入門書であるためだと思われる。

■コメント
授業設計&授業実践の裏には、やはり必ず大きな準備時間がある、ということがよく分かる内容でした。
これらのケースメソッドの授業準備の手法は、ケースメソッドに特有の準備というよりも、
熟練した授業者ならば、必ず行っているものだ、と感じました。
たとえば、
・参加者のプロフールの理解
・参加者の発言の仮定と、それに伴った授業進行のシナリオ作り
・板書の技能
等は、ケースメソッドであるかレクチャーメソッドであるかは関係なく、授業の『場』作りには必須のものだと思います。

平成19年5月16日
課題の要約
修士課程1年
稲木健人
 
 課題の要約を一言で言ってしまえば、ケースメソッドの仕組みとその目的である。書いてあることは確かなことばかりであるのだが、実践は難しいという感想を抱いた。
 まず、ケースメソッド教育とは「参加者個々人が訓練主題の埋め込まれたケース教材を用い、ディスカッションを通して、ディスカッションリーダーが学びのゴールへと誘導し、自分自身と参加者とディスカッションリーダーの協働的行為で到達可能にする授業方法」である。ここではケーススタディは事例研究であり、ケースメソッドとは異なるものである。ケースメソッドを行う目的の主な目的として、リーダー格であるゼネラリストの創出である。複雑化する社会において専門化が進む一方、そういった専門家をまとめ、多様な良さをいつでも活かせる人、それがゼネラリストである。注意が必要なのは、P10にあるようにこの手法が可能とするのは総合力等といった縦軸の能力の創出であり、専門知識といった横軸の知識の創出ではないことである。なぜならそれが討議を通じた智慧の創出であるからである。参加者にはあるテーマを討議するというシステム用いることで実行する。そのシステムの主役は参加者全員である。ここには協創と独創がある。協創とは皆で考え、意見をまとめることであり、独創とは自分自身最後に残ったものを自分自身で確認することである。換言すると協創と独創とは成果と結果の関係である。ケースメソッドの目的としてはゼネラリスト型人間の創出であるが、更に一般化したところに、多様な人間の討議から智慧を学び、それを生かし、理解することである。
ケースメソッド学習が実践的学習方法であるため、参加者の高い意識も求められ、教える講師側にも周到な準備が必要である。このことが資料の後半に書かれている内容で多くはケースメソッドの講師側からの認識であるが、重要なことは前半20ページ前後までである。
コメントとして個人的に重要だと感じたのは討議において、勇気・礼節・寛容であるという内容である。このことはビジネスという舞台において、更にはリーダー層には求められる要素である。しかし、組織のリーダーがこういった要素を持っているかと言えば、そうではない。しかしこれからのリーダーにはこういったいわゆる品位を持った人間になってもらいたいし、私はそうなりたいと強く感じた資料でした。

【要約】
 ケースメソッドとは、経営者の資格能力を滋養することがその基本理念にある。
 ケースメソッドと従来のレクチャー型の授業を想定するばあい、レクチャー型が、知識や技術を多く習得することが目的であったとするならば、ケースメソッドは、それらの知識や技術を統合して、経営の複雑な状況に適応させていく能力(統合力・洞察力・戦略力)の開発が目的であるといえる。レクチャー型は、比較的、スペシャリストの養成に向いており、ケースメソッドは、スペシャリストを束ねるゼネラリストの養成に向いていると理解することも可能。
ディスカッション形式のケースメソッドの授業に臨むにあたり参加者には、次のことが要求される。
学習者には、ディスカッションを通じた成果を高めるために、個人予習、グループ討議、クラス討議という3つの学習ステップが要求される。ディスカッションに参加する際には、「勇気」「礼節」「寛容」を重視し、協働的な態度をとることが重要である。ケースメソッドを通じて得られる「学び」は、準備からの試行錯誤を通じて、活発なディスカッションを通じて形作られる新たなものの考え方、枠組みである。これを理解しておくことが必要となる。
講師は、ディスカッションリーダーといわれ、参加者の自立性を引き出しつつ、教育目的を達成することを同時に行なう能力が要求される。講師に必要なスキルとして、「フレーミング「ファシリテーティング」「トラッキング」の能力が必要とされる。同時に、授業参加者にケースメソッド形式の授業に対する理解、つまり、上記で指摘した点が授業参加に際して必要であり、それがなぜ必要なのか、明確に説明することが要求される。

【コメント】
  ケースメソッド教育法が、ゼネラリストの養成を目指した教育法である、としていた高木先生の定義は、新鮮だった。これまで、50歳代前後の方から、現状の学校教育・企業教育仕組みだと、ゼネラリスト(エリート)の養成が難しいという発言を、何度か伺う機会があったからである。ケースメソッド自体でゼネラリストの養成ができるとは簡単に考えることはできない。ゼネラリストを志した者が多く集まる中で、ディスカッションを行なうことができる、などの状況を加味すれば、ゼネラリストの養成にとって有効になると考える。

ケースメソッド教育ハンドブック
髙木晴夫・竹内伸一  慶應義塾大学ビジネススクール 2006

要約
●「ケースメソッド教育」
 ケース教材ではなく、それを利用し行う「ケースメソッド授業」という授業方法である。それは、訓練対象の主題が含まれるケース教材を用いてディスカッション授業を実施する体系的な教育行動を示す。

●「ケースメソッド授業」の具体的な定義
 「参加者個々人が訓練主題の埋め込まれたケース教材を用い、ディスカッションを通して、ディスカッションリーダーが学びのゴールへと誘導し、自分自身と参加者とディスカッションリーダーの協働的行為で到達可能にする方法」である。

●「ケースメソッド授業」の外見上の特徴
  ①ケースと呼ぶ冊子状の教材を使用
  ②ケースをもとにディスカッションが行われ、そのプロセスにおける思考が重要
  ③協働的な態度をもってディスカッションに参加
  ④教師がディスカッションの進行と舵取りを実施し、プロセスを主導

●「ケースメソッド授業」の効果
 経営能力への効果を例にあげれば、その能力は「情報の記憶」=横軸と「情報の創造」=縦軸からなる。ケースメソッドは後者、つまり、既にある情報と入ってくる情報の組み合わせや新しい情報を創る訓練機会を提供し、その力を向上させる。

●「ケースメソッド教育」の設計プロセス
 ケースメソッド教育を導入するにあたっては①包括的理解 ②コース開発 ③参加者募集 ④教材選択 ⑤授業 というように綿密なプランニングが求められる。それは、ケースメソッド教育ならではの教育効果(情報の統合力・意思決定力の)を実現するためにも、学習目的と教育方法の適合性を確認し、ケース教材・教育対象・ディスカッションリーダー等の諸変数を有機的に機能させねばならないからである。

コメント
 ケースメソッドの学習効果は、みんなでディスカッションすることでもたらされる。問題解決に関して実際の現場を想像すると、個人で解決を目指すのでなく、そこには必ず仲間や上司などが関係してくる。そのことから集団討論で学習を進めることは大変有意義と考える。

『ケースメソッド教育ハンドブック』

【要約】
ケースメソッド教育は、ロースクールにおける判例研究(模擬裁判)を参考に、
1930年代にハーバード・ビジネススクールが経営事例を討議する授業を
開発したことから始まった。日本では1962年に慶應ビジネススクールが
導入したのが最初である。

その特徴は、経営能力に不可欠な、専門知識の軸と統合力/洞察力/戦略力の軸が
クロスした空間にマッピングされる能力の開発が目的とされている。

一般に、流派は複数存在するが、ハーバードロースクールとビジネススクールにおける
違いが顕著である。前者は、ソクラテス・メソッドと呼ばれる論破の
能力の開発が重視され、後者では、相手を理解しようとするカウンセリングマインドの
養成が重視される。これは裁判に必要な能力と経営に必要な能力の差異と
いうこともできる。本著で扱うケースメソッド教育は主に後者のものである。

ケースメソッドに必要なものは、ケース教材、ディスカッション、
恊働的な討議態度、教師(ディスカッションリーダー)である。
教師の視点にたてば重要なものは、フレーミング、
ファシリテーティング、トラッキングである。
それらとケース教材を活かして、
受講者が「自発的に」「恊働して」「相互作用のもと」
「経営に必要な(前述の)縦軸・横軸双方向の学び」を
得られるようにすることがケース教育において目標とされる


【コメント】
・ケースを用いたクラスでは、それを有効に機能させようとすると思うならば、
かなり綿密なフレーミングやファシリテーリング、トラッキングが必要となってくる
ことが予想される。そのことに関して言えば、本授業もとても参考になる
『CASE STUDY RESEARCH』を教材に用いたケース教育の一種と言えると思う。
これまでの授業を振り返っても、実に綿密かつ有効にフレーミング、ファシリテーティング、トラッキングが
なされていたであろうことが予想される。

【要約】
 ケースメソッド教育とは、ケース教材を用いたクラス討議形式の授業形態であり、統合力や洞察力といった属人性の高い力についての教育に用いられている手法である。
比較対象としてレクチャー教育があるが、これは専門知識を伝達するための効率的手段であり、教材やクラス風景といった点でケースメソッド教育とは全く異なっている。
 討議を用いた統合的智慧の会得を目標とすることから、ケースメソッド教育はゼネラルマネジメント人材の育成に用いられている。
 ケースメソッド教育を実践するにあたっては、準備が非常に重要である。ケースメソッド教育は、レクチャー教育とは違い授業効果やその認識が本人のケースメソッド教育に対する理解に左右される部分があり、そのために教師には受講生に対しケースメソッド教育を受け学ぶことに対する、動機付けや理解を促す必要性がある。そのために、個人予習・グループ討議・クラス討議という段階が一体として必要である。

【コメント】
一回の授業の背景にこれだけの苦労があるのに驚嘆した。一方、教育効率の悪さ(生産性が悪いかどうかは分からないが)についてどうにかならないかとも思う。文中に80人の授業が円形座のおかげでどうにかなったとあるが、教室設計の面からケースメソッド教育に対応したものを用意せねば、日本で多くのゼネラルマネジメント人材を育成することは難しいだろう。もっとも考えてみると、経験上HD品質のPolycomはかなりの臨場感があるので、こういったテレビ会議システムを活用すれば、世界中どこでもケースメソッド教育が受けられることとなり、下手なレクチャー教育よりも便利なものになる可能性もある。

・ ケースメソッド教育は、理論学問に対し、実践学問を学ぶ上で必要不可欠な「体系的な教育行動」である。特に、経営能力の育成には欠かせない実践法である。
・ ケースメソッドを学ぶとは、ケースメソッドを通じて「戦略的意思決定」や「状況判断力」などを具体的な施策を通して実践していくことを学ぶことである。要するに、経営能力のタテ軸の「実践力・実践行為」を身に付けるプロセスである。経営能力のヨコ軸は専門自知識に代表され、どちらかというと「固定したもの:知識、やり方」である。それに対し、タテ軸は「変化、変動とunlearning」を重視し、柔軟性や創造性を求めている。
【ケースメソッド教育における2つのマインドセット】
・ <法律的>ソクラテス・メソッドによる「論破」:事実確認、定義の正確性、主張の論理性、語学的説得性
・ <経営的>相手を理解力とベースとするカウンセリングマインド:洞察力に基づく意思決定、実行、経営的な成果。→ 協働が根本にある経営
【ケースメソッド教育とは】
・ ケースメソッドとケーススタディーが異なる。
【ケースメソッド授業の外見的特徴】
①ケース教材、②ディスカッション:プロセスにおける思考を学ぶこと、③協働的な討議態度:相手の意見の違いに気付かせること、「勇気」、「礼節」、「寛容」によって双方に建設的な討議にしていくこと、④ディスカッションリーダーの役割:参加者の自律性を引き出し、教育目的を達成すること。(協働的な行為)

【コメント】
大学と大学院は、学習者に教養をつけ、その自律性を引き出す役割を担う/義務がある。それは、本人と社会にとって重要な課題/問題を発見し、それを論理的な分析し、理解した上で(理論学問)、具体的な解決方法を構想し、それを実践する(実践学問)である。ここで「自律性」と「問題解決」は根本的な課題となり、「ケースメソッド教育」が欠かせない。
「理論学問」中心のCIS諸国教育に比べて、日本の大学は「実践学問」を重視し、教師と学生、地域社会と学生の協働的行為ははるかに進んでいる為、日本の高等教育の方が、応用力が高く、日本の学生の方が「実践力」が付いているはずだ。
だが、高等教育の有効性は、「理論学問」と「実践学問」の教育の徹底だけではなく、学習者の「当事者意識」の有無にも大きく影響させると思う。学習者の「当事者意識」の醸成には理論学問より実践学問(ケースメソッド教育)の方が役立つが、教育場におけるケースメソッドの効率性を上げる為にどうすれば良いかが、まだ未解決な課題だと思っている。

“Case Study Research” Robert K. Yin
第2章 要約
・ リサーチ・デザインは、(収集すべきデータを明確化し)研究で扱うデータや結論を「研究の問い」に結びつける論理的な構造であると共に、あらゆるタイプの研究において必要不可欠である。(リサーチ・デザインは、扱うデータの数ではなく、リサーチ全体の論理的な流れを確保するためにある。)
・ 質の高い研究を実現するには、リサーチ・デザインの設計上、以下の5を明確化すべきだ。①「研究問い」(How? Why?)、
②その命題(リサーチによってどのような「どのように?(理論/仮説)」問題を解決したいのか?)、
③分析単位(何がケースであるか?ケースの特定の社会現象との関係性。選択理由)、
④データを命題に結びつける論理、(①,②の明確化)、⑤発見物の解釈基準(科学的方法)
・ リサーチ・デザインの質は以下の要素にかかっている。①概念構成妥当性construct validity、②内的妥当性internal validity、③外的妥当性external validity、④信頼性reliability
・ 仮説/理論開発の重要性:理論の開発はデータ収集に先立つ。Field Contactsも「研究の問い」と「研究命題」の明確化にかかっている。
・ 特定のケーススタディーから包括的な理論への一般化(analytical generalization, statistical generalization)
・ ケーススタディー設計には、単一ケース(全体的)(部分的)、複数ケース(全体的)(部分的の4つのタイプがある。(複数ケース>単一ケース(リサーチ・デザイン上や応用上))。単一ケース<ダブルケースのケーススタディーが望ましい。
・ 複数ケースの場合:ケース選択の条件は、replication logicであり(研究の問いが一緒で、同じような社会的な状況の中で起こるケース)、sampling logic(自分の仮説に合うようなケースの選択)ではない。

【コメント】
第2章を通じて、改めて「研究の問い」と「命題」の明確化の重要性に気付いた。(研究のリサーチ戦略に関係なく)。
ケーススタディーにおいて、理論/仮説の策定はデータ収集に先立つと書いてあるが、ケーススタディー自体の選択にデータ収集の事前準備が必要の為に、必ずしも上記のような因果関係ではないと思う。


■概要
ケーススタディにおいて特に重要なのは、5つのリサーチ設計の
構成要素である。
1:研究問題a study`s question
2:研究命題its propositions (if any:もし何かあれば程度)
3:分析単位its unit of analysis
4:命題とデータの繋がりthe logic linking the data to the propositions and
5:解釈の基準the criteria for interpreting the findings.
がある。ただし、4・5についてはまだだの場合にもつかえる確定した形式はない。
(4章・6章で説明するとある。)
さらに、質については、4つの項目がある。
1:概念構成妥当性construct validity
2:内的妥当性internal validity
3:外的妥当性external validity
4:信頼性reliability
また、あとから別の人がケーススタディを追えること、つまり
追試性も重要である。
ケースの捉え方は、単一ケースと複数ケースがある。
複数ケースの方が説得力があるが、
導き出される研究結果によっては、単一ケースでも有効である。


■コメント

ケーススタディは、「なぜwhy」、「どうやってhow」に向いているリサーチであり、
対象から導き出される価値によって5つのリサーチ設計の構成要素を
考えるべきと思いました。
ただ、漫然とデータを収集するのではなく、最初に何を知りたいかが、
いかに重要か再認識できましたが、この章だけでは、自分の研究にどう応用するかは
まだ漠然としすぎています。
『ヤバイ経済学』(原題:freakonomics)では、「なぜ麻薬の売人は、母親と同居しているのか?」という命題にそってケーススタディが行われており、こうした事例を
多く見てケーススタディのポイントを体得する必要があると認識しました。

Yin、第2章 (松橋)

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【文献】
CASE STUDY RESEARCH Design and Methods
Robert K.Yin SAGE Publications 2003
第2章 ケース・スタディの設計

【概要】
ケーススタディは、生物学や心理学のように調査デザインのマニュアルが開発されていない。2章では、ケーススタディをより体系的にするために、ケーススタディの調査デザインを定義している。リサーチデザインを行なう目的は、調査や調査結果が、初期のリサーチクエッションに関連しない状況を避けることである。つまり、無駄な調査を行なわないためである。

本章ではまず、リサーチデザインを組み立てるための手順ついて説明している。まず、リサーチデザインの構成要素は、「調査の問い」「命題」「分析単位」「命題とデータの論理的つながり」「発見の解釈の基準」からなる。「調査の問い」は、調査の“How”“Why”に対応する部分であり、「命題」は、「調査の問い」から導き出される仮説である。「分析単位」は「命題」から導き出される。「調査の問い」に関連した分析単位をとらないと、調査結果がぼやけ、ケーススタディは問題を抱えることになる。「命題とデータの論理的なつながり」では、パターンマッチングのアイディアが参考となる。「発見の解釈の基準」では、統計的な計算は行なえず、的確な方法はない。そして、ケーススタディのリサーチデザインにおける理論の役割は、有効なリサーチデザインやデータ収集方法の定義や支援だけでなく、ケーススタディの結果をまとめて一般化するときの主たる手段になることである。

次に、リサーチデザインの質を判断するための基準の説明している。基準は、次の4つである。「概念構成の妥当性」「内的妥当性」「外的妥当性」「信頼性」である。「概念上の妥当性」は、調査の概念ために正確で操作可能な基準が作られるかどうか、という問題である。「内的妥当性」は、因果関係の作るときに注意すること。例えば、調査した2つの変数の因果関係を分析しようとしたときに、2つの変数に影響を及ぼす第3の変数が存在するか、という問題である。「外的妥当性」は、一般化するときに注意が必要となる。あるケースの結論が、他の似たようなケースにも当てはまるかどうか、という問題である。「信頼性」は、反証可能性を確保するために、同じリサーチデザインを実施したときに、同じ調査結果がでるように、リサーチデザインを設計することへの注意である。

ケーススタディのデザインでは、ケースの数と、ケースと分析単位の関係についての4つのバリエーションから説明している。ケースの数:単一対複数。基本的には、ケースは複数を選びケーススタディを実施するべきである。データからの説得力も増すし、一般化しやすい。単一ケースは、“明確な理論を批判的ケースでテストする場合”、“極端・唯一のケースである場合”“代表的なケースである場合”“科学的調査が近づき難いケースの場合”“長い時間をかけている場合”の5つの場合、論理的に認められる。複数ケースでは、追試のロジックから調査デザインする。ケースの分析単位:全体対部分。単一ケースでの注意点を指摘すると、ケース全体を分析単位として捉えた調査の場合は、調査の問いが調査者の知らない中で変わっていくことがある。また、部分を捉えた調査では、分析が部分を対象にしたままで全体の分析になっていないことがある。

【コメント】
中盤は、一般的に社会科学で問われる基準を指摘しているわけだが、上記をケーススタディで満たすことは難しく、強い配慮が必要だと感じる。複数ケースでの、ケース選択は追試的に考え、調査を実施していく、という説明に対しては、疑問があった。なぜなら、特に、最終的に調査をレポートにする場合は、(実際の調査プロセスと異なっていても、後付で)一定の理論と根拠にそったサンプリングの結果、ケースを選択したと書くべき、と理解していたからである。しかし、(実際に記述するかどうか別としても)当初の仮説が、ケーススタディのプロセスの中で修正され、補強されていくというプロセスは少なからず調査時に起きることであろう。その事実も、調査結果と同様にある程度公表されることが多くなると、ケーススタディで研究を行なおうとする人間にとっては参考になるのではないだろうか。

【課題図書】:Robert K.Yin,CASE STUDY RESEARCH Design and Methods Third Edition,SAGE Publications,2002:【第2章要約】:◆=定義,RD=リサーチデザイン,D=デザイン,CS=ケーススタディ
◆D:経験データと,学術,初歩的質問形式から結論までを繋ぐ論理的序列.
◆RD:結果の集計,分析,説明手順を解説.変数の中の因果関係の推論構築論理的証明モデル.
■CS4点:(a)妥当性の組み立て,(b)内部的妥当性,(c)外部的妥当性,(d)信頼性■RD青写真4項目:1.研究の質問形式(以下Q)は何,2.何データが適切,3.何データを収集,4.結果をどう分析.■RD構成要素(初歩的な理論の導出):CS確定形式なし.1.研究のQ:Qによる分析戦略選択.2.提案:調査対象に注意が必要.3.分析単位の選択:何をケースとするか.※非常に困難.※Qが1単位に行き着かないときは,曖昧か,過多.1単位に行き着いた場合でも,他RDから見直される可能性あり,定義されても,現象が,他定義を要求することあり.4.提案とデータの論理的な関係:心理学は整合性なし.5.発見の説明基準:統計的に証明不可.※4,5は更なる革新必要.※RDと,データ集計は異なる.※複製の場合より一層.※データ収集より戦略が重要.⇒存在する知識が貧弱で,概念的な枠組みや仮説を全くもたらさない場合,自身の理論的な記述ではなく,経験的な『実地研究』に基づく方向にシフト.以下の条件が重要.(a)何が実地研究されるか,(b)実地調査の目的,(c)実地調査の成否の判断基準■CS理論構築克服要素:1.関連論文再読,2.トピックやアイデアの討論,3.何を研究しようか自問自答,4.何故提案するか,5.何を学びたいか.■理論構築の対象となる理論一覧(6つ):為ミスマッチ回避.履行理論(MIS例),個人理論,グループ理論,組織理論,社会理論,意思決定理論※次のデータ収集段階,一般化にも有効.※単一ケースはサンプル否.■RDの質判定要素:1.信頼度,2.信憑性,3.確証性,4.データの信頼性■CS履行テスト戦略4つ:1.Construct Validity※CSで一番問題を含むテスト.客観的評価基準の難しさ.○2段階:①研究用特定変化選択②変化に対する選ばれた評価基準が,特定なタイプの変化に本当に影響を与えているか.2.Internal Validity:主要2点.①因果関係(or説明的)CS(X,Y関数表記)に影響する,他の関連性(Yに対するZの影響とか)を見逃せば無意味.②CSは直接観察不可事象に対して推論可.※ライバルの説明,可能性は熟慮されたか?※根拠は収束するか?3.External Validity:一般化の可否.(分析一般化),(統計一般化)の違いに注意.4.Reliability:結果の模倣を他ケースで調査不可.エラーとヴァイアスの最小化必要.プロセスの提示.■CSD:ケース最低2つ以上.○単一CS:理論的解釈5つ:1.よく定義された理論の検証,2.極端特異な場合,3.代表的,典型的な場合,4.意外な真実の発見,5.複数時間軸断面対象時.※内包,包括的双方有.○複合CS: 2~3文字通り複製,4~6理論的2つ異なった複製.6~10一番説得力有.※過多は逆効果.広範条件が不変時,小さな少数の理論的複製がよい.複製とサンプリングは違う.2.5の図(P50):要点はループ構造1.ケースが元々のDに不適.2.発見がオリジナル理論的提案再考促進.⇒再D.怠れば,発見歪曲,無視危険発生.複合CSがよい.批判に強い.比較可能,一般化容易. 内包,包括的双方有.■CSの批判:単一CS批判は,関連する特殊性,人工的条件への恐れが元.対研究者CS扱い能力不信.■CS扱いの注意(閉Dか,変幻自在Dか)データ収集中にCS向上を考えない.D向上時も,細心の注意必要.【コメント】:理論構築がCSだけでなく他へも応用可能か興味有.CSの選択と構築,遂行,考察過程理解可.

平成19年5月10日

第2章 ケーススタディの設計(デザイン)の要約

修士1年課程
稲木 健人

リサーチデザインの定義
 まずケーススタディをする際、その設計が必要となる。それがリサーチデザインである。1章の繰り返しとなるが、ケーススタディはワンショットの事後テスト設計(one-shot post test-only design)と考えられてきたが、これは固有のリサーチデザインである。具体的に言うと、ここからあちらに行くための行動プランであり、そのための青写真である。リサーチデザインの構成要素に重要な以下の5つがある。
1、 研究問題:「なぜ」「どのように」にあたる。
2、 命題:「何かがあるからこうである」の証拠、論拠を示す。
3、 分析単位:曖昧だが、ケースとは何かという根源的問題
4、 データを命題に結びつける論理
5、 発見物の解釈基準:4と5はこれまでケーススタディでは開発が最も遅れてきた箇所である。いわゆる理論開発である。データを収集した後に何をすべきというもの。

リサーチデザインの質の判断基準
信用性、信憑性、確証性、データの信頼性などがある。この本の主張したいことはケーススタディを行う場合、これら4つのテストを扱うのに役立ついくつかの戦術を明らかにしている点である。

ケーススタディのデザイン(青写真の描き方)
ケーススタディ戦略の4つのタイプは1、単一ケース全体的設計 2、単一ケース部分的設計 3、複数ケース全体的設計 4、複数ケース部分的設計である。これらは単一ケースか複数ケース2タイプが出発点となっている。
 1、単一ケースデザインについて
単一ケースがしっくりくるのは、定式化された理論をテストする際の決定的ケース、ユニークなケース、新事実のケースである。一方で潜在的弱みとしてあるケースが最初に考えたようなケースにならないことがあとになって分かるかもしれないということである。
2、複数ケースデザインについて
単一ケースデザインより説得力があるという点で長所があるが、非常に時間とコストがかかる。よってそう簡単には実行に移すことはできないのだが、ここでは「追試」の論理という新たな提案を行っている。すなわち、誰が行っても同じ環境下では同様の結論が出る、または出ないという研究過程の重要性である。

コメント
ケーススタディとは読み進めても結局のところ理論面で弱いことを著者、読者ともに認めている。それでもこの本の良いところは、定性的、定量的研究に関係なく、いずれにも研究を進める上での作法といったものが大切で、その一つが第2章で出てきた「追試」の論理の重要性です。

Yin,第2章(三好)

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【教材】Yin, Robert K, “Case Study Research: Design and Methods 3rd edition. “, Sage Publications, 2002. 第2章

【要約】
ケース・スタディを設計する時には、他のリサーチ研究を設計するのと同じようにリサーチ設計が必要である。リサーチ設計は、①研究問題、②研究命題、③分析単位、④データを命題に結びつける論理、⑤発見物の解釈基準、の5つによって構成されている。これらの要素を持って、経験的データを当初の研究問題に結び付けることがリサーチ設計なのである。
ケース・スタディ設計の基本タイプは、「単一ケース設計」or「複数ケース設計」、「全体的」or「部分的」、という設計状況2×分析単位2のマトリクス、合計4種類が存在する。単一ケースはそのケースが(1)決定的なテストである場合、(2)稀・ユニークである場合、(3)新事実を明らかにする場合などで有用である。一方複数ケース設計は、より説得力があり、研究全体が強固だとみなされる場合が多いが、時間や資源が多く必要なのも事実である。そのためサンプリングの論理ではなく“追試の論理”に従うべきである。
リサーチ設計の質を判断するには「構成概念妥当性」、「内的妥当性」、「外的妥当性」、「信頼性」という社会学研究に共通する4つの判断基準があげられる。
最後に、ケース・スタディの設計を変更することに関してだが、厳密な状況においてのみ可能である。当初と異なるケースを選択する場合などには可能だが、発見されたデータに合わせるための研究目的やや対象の変更は認められない。

【コメント】
今回、特に印象に残ったのはケース・スタディ設計の重要性である。設計の基本タイプとして4種類が存在すること、単一ケースか複数ケースかを判断する上での双方の特徴などこれまでは特に意識することのなかった部分を学ぶことができ、今後研究を進めていく上でとても参考になった。また、今後無意識のうちにケース・スタディを自分の思惑にのっとって研究の目的などを変更してしまうことのないよう注意しなければならないと感じた。

【要約】
まずリサーチデザインするということにおいて、以下の5点は欠かすことのできない。
・リサーチクエスチョン - だれが、なにお、どこで、どうやって、なぜ等の疑問系で。
・仮説 - 研究の焦点を明確にするために。
・分析対象の単位 - 個人なのかグループなのかなど。
・仮説を評価するためのデータ
・上記データを評価するための基準・程度の判断

この決定において、先行理論・ライバル理論・グランドセオリーは比較検討を通じて大きな力となり、
これらを通じてケーススタディをデザインするためのフレームワークができあがってくる。
ここでできあがったリサーチデザインは、構成概念妥当性・内的妥当性・外的妥当性・信頼性という4つの軸を通じて検討がされる。

そしてケーススタディに特異なリサーチデザイン設計の考え方として、横軸にsingle-caseデザインとmultiple-caseデザイン、縦軸にholistic・embeddedをおいた4つの象限で表される分類がある。
ここで言うholisticとは、ケースが十分に小さくリサーチクエスチョンで決めた最小分析単位でしかない場合か、もしくは先行理論などが適用できる最小単位かということを表す。
single-caseデザインは、特殊な症例や代表性の高いケースなど、一つを扱っていても十分問題のない場合に用いられる。multiple-caseデザインは、得られた理論を追試として適用して説得性を高めたい場合などに用いられる。

【コメント】
サンプリングではなく追試というのが非常に気になった。たしかにサンプリングは母数から偏り無く抽出する必要がある統計的手法のためケーススタディでは用いることができないが、同時にこの場合追試に使用するケースは恣意的に選べるのでは中という疑問もわき起こる(もちろん各種妥当性は検討されているが)。そのため、そもそもケーススタディに複数ケーススタディは必要なのか?(特異な症例などを学術的に扱えるからケーススタディを使うのであって、統計的に扱えるそうでもない状況でケーススタディを使う意味があるのか。)という思いが残った。

CASE STUDY RESEARCH
Design and Methods
Third Edition
Robert K.Yin SAGE Publications 2003

弟2章 Designing Case Studies
研究Designは Studyの最初質問に収集された Dataの連結 Logicだ。 すべての経験
主義的研究は明確ではない場合研究Designを言う。 操作することができる
Case Study Designと もっと明瞭になる何なのかを研究することを助けるために理論を
明確にしている。 追加的にCase Study Designの発見は次4 個項目の特性を最大化
することが必要だ。
(a) 妥当性の構築 (b) 内部妥当性 (c) 外部妥当性 (d) 信頼性

GENERAL APPROACH TO DESIGNING CASE STUDIES
1. Definition of Research Designs
研究DesignはHereからThereまでというlogical planだ。 Here は回答されられた最初
質問で, There はこのような質問に対していくつかの結論たちで定義することができる。
係わった Dataの収集と分析を含んで Here と There 間に多い数の重要な進捗たちを
見つけることができる。また他の方法は Studyに対する質問, 係わった Data, 収集された
Data, 結果分析方法の問題と 係わる研究の青写真だ。
2. Component of Research Designs
Case Studyは次の分析方法が重要だ。
(1) Studyの質問 (2) 計画 (あったら) (3) Unit の分析 (4) 計画に対して logicの連結 Data
(5) 解釈された発見たちに対する批評
3. The Role of Theory in Design Work
(1) Theory development
Case Studyに対する Design 段階の一部として 理論発展は Case Studyの目的発展
あるいは理論テストとは 関係なく必須だ。
(2) Illustrative types of theories
一般的に理論発展障壁を乗り越えるのに どうして研究をするのか, どうして研究を提案
するのか, 研究結果で学ぶのを願うのが何なのかに対する関連文献を Review して,
仲間と先生たちと トピックとアイディアを論議して準備する。
(3) Generalizing from case study to theory
理論発展はただ Case Studyの Data 収集を易しくするのではない。 適切に発展した
理論は Case Studyの結果を一般化させる。

CRITERIA FOR JUDGING THE QUALITY OF RESEARCH DESIGNS
1. 妥当性の構築 : 研究する Conceptに対して正しい測定を作ること
2. 内部妥当性 : 仮想の関係と違ってある状況が他の状況に至ることを見せてくれる
Casual関係を作ること
3. 外部妥当性 : 研究発見を一般化する領域を設定する。
4. 信頼性 : 繰り返されてまったく同じな結果を現わすことができる研究運営を証明すること
(Data 収集手続きのような)

CASE STUDY DESIGNS
1. What Are the Potential Single-Case Design (Type 1 and 2)?
- Rationale for single-case designs
Singleと Multiple Case Design 間に Case Studyを Designすることは根本的に違う。
これは Dataを収集する以前に Singleなのか Multiple 人だ研究質問を決めるのが
必要だということを意味する。
2. What Are the Potential Multiple-Case Designs (Type 3 and 4)?
- Multiple-versus single-case designs
いくつかの分野の Multiple Case Studyは Single Case Studyと違う方法論を考慮している。
Multiple Case Designは Single Case Designを比べて長所と短所を区分する。

MODEST ADVICE IN SELECTING CASE STUDY DESIGNS
1. Single-or Multiple-Case Designs?
すべてのデザインは Multiple-Case Designなのか Single-Case Design 認知を選択
しなければ ならない。 Multipleの場合本質的に分析的利益を得ることができるし
Singleの場合強い 論旨が必要だ。
2. Closed Designs or Flexible Designs?
Case Study 研究を進行しながら修正や代替が必要な場合Case Studyの本質と理論的
変化を考 慮する。

【コメント】
実際 Case Studyの研究法適用には状況分析によって各 Case Studyの固有特性によく
当たる方法を適用した方が良い方法だと思う。 Flexibleという用語が目立ったがCase Study
研究進行途中突然の変化や状況, 代替が必要な場合 問題の本質をよく把握して進行する
のが重要だと思う。 整形化された形式から状況にあうように適用する柔軟性は研究で必要な
要素と思う。

Yin 第2章(羽鳥)

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CASE STUDY RESEARCH Design and Methods
Robert K.Yin SAGE Publications 2003
第2章 ケース・スタディの設計

【要約】
ケーススタディも、他の研究手法同様、リサーチデザインが必要である。リサーチデザインの方法論とは、理論モデルを作るために、情報を集め、分析し、説明する指針になっている。
リサーチデザインには、①研究の課題、②研究の主張、③分析単位、④データと主張のつながり、⑤発見物の解釈基準の、5つの要素がある。さらに、ケーススタディのデザインには理論の開発が不可欠であり、それは分析的一般化によるべきである。
リサーチデザインの質の判断には、①構成の妥当性(操作的な尺度があるか)、②内部の妥当性(より広い課題に対して因果的な推論を行っているか)、③外部の妥当性(他の事例に適用できるか)、④信憑性(再現可能であるか)、という4つについて検討する必要がある。
ケーススタディは、単一・複数/部分・全体の2軸であわせて4つのタイプがある。
単一のケーススタディの場合、①既存理論の決定的なケース、②ユニークな事象のケース、③典型的なケース、④啓示的なケース、⑤長期的なケースを扱う。また、ケースの全体を扱っても、ある一部分を扱ってもかまわない。
複数のケーススタディは、信憑性が増すと考えられるが、その一方で①②④はその特徴上、単一でしか扱えず、また複数にすれば当然手間はかかる。複数ケースを扱う場合は、サンプリングの理論で統計的優位性を示すのではなく、追試の理論で試行の回数を増やす枠組みを使う。


【コメント】
具体的にどのようにケースを扱えばいいのか、非常に分かりやすく解説されていた。特に、ケーススタディを複数実施する場合、統計的優位性を示すのでなく試行回数を増やすというところが(実際に研究に落とせば当たり前なのかもしれないが)、非常に興味深かった。
自分自身の研究に落とした場合、どのようなケースを扱えばよいのか、大雑把だが指針が見えた気がした。

Robert K. Yin. Case Study Research: Design and Methods. 3rd,ed. Sage Publications, Inc, 2003
Designing Case Studies

■リサーチ・デザインに求められること
・リサーチ・デザインにおいて最も重要なことは,経験的データによって,最初のリサーチ・デザインと結論とを結ぶことにある.
・リサーチ・デザインには5つの構成要素がある.1つめは,「研究の問い」である.2つめは,「命題」.3つめは,「分析単位」である.4つめは,「データを命題に結びつける論理」である.そして最後に,「発見されたデータを解釈する基準」である.
・これら5つの構成要素を充たすために,理論枠組みが必要となる.説明的,記述的,探索的といったいかなる研究においても,理論枠組みを開発することに努力しなければいけない.

■「リサーチ・デザインの質」の基準
 ・リサーチ・デザインは,4つの基準によって判断されなければいけない.第1に,「構成概念の妥当性」である.研究の概念に関する適確な操作尺度をつくることである.第2に,「内的妥当性」である.説明的または因果的な研究の場合に限られることではあるが,条件間における因果関係の確立である.第3に,「外的妥当性」である.研究成果の一般化のことである.第4に,「信頼性」である.研究の再現性があるか,ということである.

■シングル(単数)とマルチ(複数)の比較
 ・2つのケース,シングル・ケースとマルチ・ケースには,それぞれ単一分析と複数分析とがある.
・シングル・ケースの場合には,決定的な場合かユニークな場合ないし新しいケースである.またそのとき分析の単位を設定することが極めて重要である.
・マルチ・ケースの場合には,シングルのときより,研究に対しての説得力が増すものとなる.マルチのときは,サンプリングではなく追試によるロジックに依らなければいけない.

■コメント リサーチ・デザインを考えるさいに,とりわけ重要なのが「理論フレーム」にあるのではないかと思った.研究におけるなんらかの理論ないし仮説をもち,いかにevidenceをつくりだすか,ということが課題のような気がする.

Yin 第2章 (沢内)

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CASE STUDY RESEARCH Design and Methods
Robert K.Yin SAGE Publications 2003
第2章 ケース・スタディの設計

要約

*ケース・スタディ設計の一般的アプローチ*
 他のタイプがリサーチ研究を設計するように、ケース・スタディにおいてもリサーチ設計が必要となるが、この過程はケース・スタディを実施するうえで難しい部類に位置する。
 リサーチ設計は、研究する問題は何か、関連データは何か、収集すべきデータは何か、その結果をどう分析すべきか、つまり、観察結果を収集し、分析し、解釈する過程において研究者の指針となるものである。また、設計における主目的は、収集した証拠が最初のリサーチ問題に向けられないような状況を避けるようアシストすることである。さらに、リサーチ設計の5つの構成要素を意識した上で、ケース・スタディの実施にあたっては理論の構築が求められる。それは、適切なリサーチ設計とデータ収集の定義づけに大きな助けとなるだけではなく、ケース・スタディの結果の一般化へ向けた媒体となる。

*リサーチ設計の質の判断基準*
 論理的な説明を示さなければならないリサーチ設計において、そのリサーチ設計の質を確立することもまた重要である。その実施にあたっては、1)構成概念妥当性 2)内的妥当性 3)外的妥当性 4)信頼性 のテストが適切となる。だが、その実施方法はさまざまあり、さらにその時期も各方法による。

*ケース・スタディ設計*
 ここではリサーチ設計を4タイプに分けて論じる。それは、単一・複数の両ケース・スタディが異なった設計状況を反映し、さらにそれぞれに1つあるいは複数の分析単位を想定している。単一ケース・スタディは5つの論拠のもとでは正当であると認められる。一方、複数ケース・スタディは世に広がりつつあるが、その実行には多くの費用と時間がかかる。そのため、その利用はサンプリングの論理ではなく追試の論理に従うべきとする。

コメント
 この本を読んでいくにあたって、漠然としていた研究というものの姿がうっすら見えてきた感じを持つ。研究テーマを再設定しようとしているが、本章で取り上げられたリサーチ設計に関して得た情報を是非テーマ設定に活かしたい。

Yin,第2章(伊藤)

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【教材】
Yin, Robert K., “Case Study Research: Design and Methods 3rd edition. “, Sage Publications, 2002. 第2章

【要約】
 あらゆるタイプの経験的リサーチには、「リサーチ設計」が存在している。リサーチ設計とは、経験的データをリサーチクエスチョンや結論に結びつける役割を果たすと共に、リサーチの青写真でもある。

 ケース・スタディの場合、リサーチ設計には①研究問題、②その命題、③分析単位、④データを命題に結びつける論理、⑤発見物の解釈基準、の5つの要素が重要である。また、完全なリサーチ設計には理論的枠組みの開発が必要である。ケース・スタディを行う際に理論を用いれば、適切なリサーチ設計とデータ収集に大きな手助けとなるとともに、追試によってケース・スタディの結果を一般化するための主要な媒介物にもなる。

 リサーチ設計の質を判断するには、①構成概念妥当性、②内的妥当性、③外的妥当性、④信頼性、の4つのテストが適切である。ただし、それら全てがケース・スタディ設計の初期段階で行われるわけではなく、データ収集・データ分析・作成の段階でも行われる。

 ケース・スタディの設計には、単一ケース設計と複数ケース設計があり、それぞれに分析単位が単一か(全体的)、複数か(部分的)かという、計4つの基本タイプがある。単一ケースは、①ケースが既存理論の決定的なテストである場合、②ケースが稀かユニークな事象である場合、③新事実を明らかにするという目的に有用な場合、にきわめて正当である。一方、複数ケース設計では、証拠の説得力が増すと考えられる。ただし、複数ケース設計の利用においては、サンプリングの論理ではなく追試の論理に従うべきであり、ケースの選択は慎重に行わねばならない。

なお、ケース・スタディの設計は、研究の初期段階の後も変更・修正ができるが、それは厳密な状況においてのみ可能である。


【コメント】
 本章では、ケース・スタディを用いた研究をきちんと行うために重要なリサーチ設計のポイントがいくつも示されていた。この内容は、ケース・スタディに限らず、意味のある研究を行う上で重要な要素だろう。また、ケース設計の基本タイプの議論に見られるような、研究手法の設計も、研究の妥当性を保障する上で不可欠だろう。これから、自らの研究の全体像を描き、それを実際に行っていく際に、これらの要素の決定・修正には細心の注意を払わなければならないと感じた。

Yin第2章(西田)

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CASE STUDY RESEARCH
2 Desining Case Studies

【要約】

■本章のテーマはケーススタディを
妥当な「研究」として成立させるための
戦略と戦術について取り扱っている。

ケーススタディは、研究のスタイルとして
まだ確立されていないので、しっかりとした
調査計画やリサーチ・デザインを設計することが
不可欠である。

■リサーチ・デザインとは、いわゆる研究の
青写真のことであり、
・リサーチクエスチョンは何か?
・どのようなデータが有益か?
・どのようなデータを集めるか?
・そして、どのように結果を分析するか?
ということを検討することである。

■これら四つのリサーチデザインの項目の中で、
特に
・リサーチ・クエスチョン
・正確さ
・分析の単位
・事象とデータの関係
・結果の解釈の評価
が重要になってくる。
その際、先行研究や理論、文献研究を通して、
自身の研究の位置づけや落としどころ、意義付け、
どのような理論化が可能かといったことを
検討する必要がある。

■ケース・スタディのリサーチデザインの評価の
基準としては次の四つが考えられる。
・構造的な確実さ
・内在的な確実さ
・外在的な確実さ
・信頼性

科学的な方法としてケース・スタディが
あり得るためには、同じ研究の手続きを
経たら、同様の結論に到達するか、という
反証可能性に開かれていなければならない。

■単数を扱うケース・スタディと
複数を扱うケース・スタディは根本的には
同一だが、研究の設計は後者が
格段に複雑である。
筆者らは、対象的な二つの事例を
用いたケース・スタディの設計を
推奨しているようである。

【コメント】
この内容は、「ケース・スタディ」と書いてあるところを
「あなたの研究」と置き換えてもその重要さは変わらない。
ある特定の対象を「科学的に」研究するにあたって、
要請されている必須事項が述べられているので、
自身の研究のあり方について、大変参考になる。

Yin,第2章(堀)

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課題図書
Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods 3rd edition. ", Sage Publications, 2002. 第2章

Summary----------

リサーチ設計とは、経験的データを問題群に、そしてその問題に対する結論群につなげる論理的計画と定義される。

リサーチ設計の構成要素として代表的なのは以下の5つである。(a)研究問題…1章で述べられた通り「いかにして」「なぜ」の問いの場合ケーススタディが採られる。(b)研究命題…検討すべき事柄を浮き彫りにする。(c)分析単位…研究問題の定義に依存する。(d)データの命題への結びつけおよび(e)発見物の解釈基準…実験による研究のデータ解釈からふさわしい類型(例:「パターン適合」)をさがす。この5つのステップを通じた理論開発を経て、はじめてデータ収集に乗り出すことが可能になる。重要なのは、研究に関わる理論の範囲をよく認識しておくこと。またケーススタディの理論は実験による研究と同じように分析的に一般化されるべきであり、統計的一般化の手続きと混同してはいけない。
リサーチ設計の質を判断するには、以下の判断基準がある。(a)構成概念妥当性…研究中の概念に操作的尺度はあるか。(b)内的妥当性…説明的研究の場合、因果関係は確立されているか。(c)外的妥当性…一般化可能な発見物かどうか。(d)信頼性…手続きは公開されていて追試可能かどうか。

ケーススタディ設計のタイプは、2{単一ケース/複数ケース}x 2{全体的/部分的}のマトリックスによって4つに分類される。
単一ケースが選択される場合とは、(1)そのケースが理論をテストする際の決定的なケースである場合、(2)稀なケースである場合、(3)そのケースが新事実である場合である。左記に当てはまらないケースの場合、誤ってケースを選択するリスクを最小限にするためにも、できれば複数ケースを選ぶのが良い。その際、選択する複数のケースは共通の理論でそれぞれの結果を同様に説明できるよう設定すべきであり、統計的有意を導くためにケースを複数用意するのでは決してないことに留意すべき。
全体的ケーススタディを行うのは(1)下位単位が識別不可能な場合、(2)基礎をなす関連理論自体が全体的特徴をもつ場合、に選ばれるべきで、それ以外は単一ケースのときと同様のリスクを回避する意味で複数の(下位の)分析単位を持つ部分的ケーススタディを行うべきである。

Comment----------

理論設計にあたっては、統計的アプローチとの混同を避けるよう口を酸っぱくして書かれていた一方、実験的研究の考え方に沿うことの重要性が説かれていた。章自体は長かったがこれがシンプルかつ重要なメッセージだと思う。冒頭に述べられた“the one-shot, posttest-only design”では、信頼できる比較対象がない点で単一ケーススタディに類似すると思ったのだが(単一ケースを選ぶ理由は明記されてはいるが、バイアスを排除できる理由になっているか?)、内的妥当性を確保する設計手法があるのか、次章以降で明らかになると期待する。

●要約
■リサーチ設計
 ケーススタディを設計するには、リサーチ設計が必要である。その際に避けなければならないのは、ケーススタディの設計を実験など他の戦略に用いられるリサーチ設計の部分集合、あるいはその変種と考えてしまうことである。リサーチ設計の構成要素として、研究問題、あるとすればその命題、分析単位、命題へのデータの結びつけと発見物の解釈基準の5つがある。また、理論開発が設計段階の一部として不可欠であり、理論命題があれば、完全なリサーチ設計は、収集すべきデータとデータを分析するための戦略を決めるにあたって強力な指針を与えてくれる。その理論は、ケーススタディの結果が一般化できる。ここでは、統計的一般化と分析的一般化の違いを理解する必要がある。
■リサーチ設計の質
 リサーチ設計の質を高めるためには、次の4つのテストをクリアする必要がある。①構成概念妥当性②内的妥当性③外的妥当性④信頼性である。特に①はケーススタディリサーチでは問題になる。
■ケーススタディの設計
ケーススタディ設計には、単一ケース(全体的)(部分的)、複数ケース(全体的)(部分的の4つのタイプがある。
 単一ケースは十分に定式化された理論をテストする際の決定的ケース、極端なあるいはユニークなケース、新事実のケースの下では特に適切である。また、同じケーススタディに複数の分析単位が含まれることもある。しかし、ケーススタディが下位単位レベルに焦点をあて、大きな分析単位に目がいかないことは避けなければならない。
 複数ケースの証拠はしばしば説得力があると考えられるが、すぐに始めようという決断は簡単にはできない。サンプリングでない追試の論理を用いる必要がある。また、複数ケーススタディにおいては、個々のケースはどちらでもよい。
●コメント
 本章ではケーススタディの設計に触れ、用いる上での数種類の落とし穴を認識した。具体的には、統計的一般化と分析的一般化の混合、単位ケースの分析単位と複数ケースの混合、サンプリング論理と追試の論理の混合、ケースを選択する上で研究の目的や対象を変化してしまう、などである。自身の研究を進める上で、それぞれの点で立ち止まり、この書を手にとって確認していきたい。

Yin,第2章(鈴木)

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◆ケーススタディの設計への一般的アプローチ
■リサーチ設計の定義
 “logical plan for getting from here to there”:「向こうへ行くための論理的な計画」
 Here:答えるべき問題群の初期設定、There:問題(解答)に対する結論群
 リサーチ設計とは「青写真」であり、「研究すべき問題は何か」「関連データは何か」「収集すべきデータは何か」「結果をどう分析するか」の4つの問題を少なくとも扱う。
■リサーチ設計の構成要素 
 ケーススタディの場合において重要なのは次の5つのリサーチ設計の構成要素である。
①研究問題:ケーススタディは「どのように」と「なぜ」の問題に最も適している
②その命題(あるとすれば):その研究の範囲内で検討すべきものに関心を向ける
③その分析単位:ケースとは何かを定義するという根本的な問題に関わる
④命題にデータを結びつける論理、⑤発見に対する解釈基準:ケーススタディの中で開発が遅れてきた構成要素。ケーススタディ・リサーチにおけるデータ分析のステップであり、リサーチ設計はこの分析のために強固な基礎を築くべきである。

◆リサーチ設計の質の判断基準
 設計したリサーチ設計の質を判断する場合、「構成概念妥当性」「内的妥当性」「外的妥当性」「信頼性」の4つの基準でテストすることが適切と考えられる。

◆ケーススタディ設計
 ケーススタディ設計における最初の区別は単一ケースと設計と複数ケース設計である。
 ■単一ケース設計
 「全体設計を用いるタイプ」と「部分的分析単位」を用いるタイプの2つがある。
 総合的には、ケースが既存理論の決定的なテストである場合、ユニークな事象である場合、新事実を明らかにするという目的に有用な場合、天啓、または長期的な目標などの条件のもとではきわめて正しいと認められる。
 ■複数ケース設計
 複数ケースから得られた証拠はしばしばより説得力があると考えられ、それゆえ研究全体はより強固であると見なされるが、同時に単一ケース設計の論拠は複数ケースで満たされないのが普通である。また実施には広範囲の資源と時間が必要なことがあるため始めようという決断は簡単にはできない。
 そこで複数ケース設計の利用はサンプリングの論理ではなく、追試の論理に従う。ケースは複数実験と同じような様式で役立つべきであり、また研究のはじめに明示的に予測された同じ結果(事実の追試)、あるいは対立する結果(理論の追試)を伴わなければならない。

◆コメント 
自分が今回の範囲で最も関心を示したのは冒頭のリサーチ設計の定義である。“logical plan for getting from here to there”。読めば読むほど深い言葉である。今現在自分は”here”におり、”there”に行くためには論理的な計画を立て、青写真を作成しなければならない。自分は「向こう」に渡れるであろうか。現在はいまだ「向こう」に渡る第一歩を踏み出すのに恐れている様な状況である。願わくばこの自分が作る道をか細いものではなく、より強固で芯の通った道を作ることで「向こう」へ辿り着きたいと思う。

第2章

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リサーチ設計とは、観察結果を収集・分析し、解釈した、研究課題に結びつける論理の設計である。
リサーチ設計の構成要素は、1、研究問題 2、研究課題の命題3、その分析単位4、データをむすびつける論理5、発見物の解釈・分析の基準である。
一般的に理論開発への障害を克服するためには、研究しようとする対称に関する文献をレビューすること、トピックとアイディアを同僚や先生と議論すること、何に対して研究しているのか、なぜその研究を提案しているのか、その研究結果から何を求めているのか、挑戦への自身の問いかけをすることである。理論にはタイプがある。個人的理論、集団理論、組織理論、社会理論があり、そのほかの例は、左記の例のいくつかにまたがっている。
理論開発によって、ケーススタディのデータ収集段階を容易にするだけではなく、ケース・スタディの結果が一般化さえるレベルにもなる
論理的な説明において、リサーチ設計においての質の判断基準は、信用性、信憑性、確証性、データ信頼性などがあり、これらがテストされるときに用いられてきたのは、経験的な社会リサーチの質を確立するためである。この信頼性を元に、構成概念妥当性、内的妥当性、外的妥当性、信頼性という4つの社会が科学の方法に共通するテストを行う。
また、ケーススタディ設計において、基本的に4つのタイプのマトリクスによって分けられる。全体的単一ケース、部分的単一ケース、全体的複数ケース、部分的複数ケースの4パターンの設計である。
ケーススタディの設計は研究のはじめだけで終わるわけではない。また、複数ケースの設計の事象の場合、新しい情報が得られた場合はその度ケースの変更を柔軟に対応しなくてはならなく、また、研究者は理論的な目的を無意識のうちにシフトさせないよう注意しなくてはならない。不合理な変更は許されないのである。

コメント
設計の中に、2バイ2の4スタイルの手法があり、その中でどれを用いるか。
客観的ソースを持って、判断すること。因果関係を考えるときは、本当に因果関係があるのかどうかを考えることが大切である。交通事故と法令の関係のように全て因果関係があるわけではない。仮説そして検証をきちんと行わないと、仮説が検証されない場合もある。つまり最初から決めたかかってはいけない。ケーススタディはあくまでも一例にしか過ぎないので、そこから理論を作り上げることが大切である。それにより、つくりあげた理論開発から、一般化することができる。


正宗美生

Yin,第2章(吉道)

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【概要】
 ケーススタディを設計していく際には、他のリサーチ研究を行うのと同じくリサーチ設計を行うことが必要である。リサーチ設計は単にそのリサーチの作業プランを扱うものではなく、リサーチを行った際に得られた証拠が当初に設定した問題に向けられるようにするものである。
 ケーススタディのリサーチ設計の場合は特に研究問題、研究命題、その分析単位、データを命題に結びつける論理、そして発見物の解釈基準の5つが重要である。その中でも「分析単位の設定」は「ケース」とは何かを定義するという根本的な問題に関わってくる、十分に考慮すべき部分である。分析単位の定義は当初のリサーチ問題が定義された方法に関連している。また、分析単位の定義を決定する際には、既存文献は多いに有用性がある。
 これら5つの構成要素を含む完全なリサーチ設計には、ケース・スタディの実施に役立つ理論枠組みの開発が必要である。理論を用いれば、ケーススタディの結果を一般化するための主要な媒介物になるのである。
 また、リサーチ設計の質の判断基準についても考慮する必要がある。ケーススタディの場合は構成概念妥当性、内的妥当性、外的妥当性、信頼性の4つのテストを用いて判断することが可能である。これらのテストを実施する際に用いられる戦略は、必ずしもケース・スタディのはじめ(ケーススタディ設計の公式段階)に用いられるとは限らない。
 ケース・スタディ設計の基本タイプとしては、単位ケースか複数ケースかという軸と分析単位が全体的か部分的かという軸の2つで分けられる4つのタイプが存在する。特に注意すべきなのは複数ケース・スタディの設計を利用する際にサンプリングの論理ではなく追試の論理に従うべきだということである。その場合、ひとつひとつのケースについては全体的であっても部分的であってもどちらでもよい。
 ケース・スタディ設計は研究の初期段階でなくても変更や修正が可能であるが、それらは厳密な状況においてのみ可能である。

【コメント】
 ケース・スタディのリサーチ設計を行う際には様々な要素に注意をしなくてはならない。私が特に重要であると感じたのはケース・スタディ設計のタイプの設定に関してである。自らのリサーチ問題を取り組む際にどのタイプを用いるのが適切であるのか、また同じケーススタディにいくつの分析単位が存在しうるのかをしっかりと見極める必要がある。また、ケース・スタディを行うにあたっては、発見したケースに合わせるために研究の目的や対象を変えるなどという本末転倒なことを行わないよう注意せねばならない。このようなたくさんの考慮すべき点についてしっかりと認識していきたいところである。

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